都市部への人口移動や経済機能の集積に伴い、地域間における医療環境や質の格差が急速に広がっている。特に深刻な問題となっているのが、患者の命を預かる医師が特定の大都市圏へ著しく集まる傾向を見せていることだ。先進的な医療施設や研鑽の機会が豊富な都市部に医療従事者が集中する一方で、地方の病院や診療所では深刻な人手不足が続いており、日常的な診療体制を維持することすら難しくなっている。
この人材の偏りは、過疎化が進む地方都市や離島などの地域で特に暗い影を落としている。過疎地と呼ばれるエリアでは、診療所の相次ぐ廃止や専門医の不在により、患者自身が自家用車や路線バスで数時間かけて遠方の病院まで通わなければならない状況が生じている。そうなれば、急性期の疾患や突発的な事故にあった際に迅速な治療対応が取れず、処置が手遅れになってしまう事態も懸念される。このように、住む地域によって生命の保障に差が生じる厳しい現実が存在するのだ。
都市部と地方の医療ギャップを放置することは、地方からのさらなる人口流出を招き、地域社会全体の衰退を速める要因にもなりかねない。住む場所にかかわらず、誰もが安心して適切な診療を受けられる環境を整えるためには、医療従事者の勤務体制や配置に関する仕組みの見直しが必要だ。また自治体や国が連携し、抜本的な施策として継続的な人的支援を推し進めなければならない。一人ひとりの命の尊さに地域差を生ませないための取り組みは、まさに急務な問題といえる。